貧血とは
血液は身体に必要な酸素や栄養を届ける働きがありますが、中でも赤血球の中にあるヘモグロビンに含まれる鉄分と酸素が結びつくことで、酸素は身体全体に送り届けられます。 貧血とは血液中のヘモグロビンの量がさまざまな原因で減少し、身体中に届けられる酸素が不足してしまう状態をいいます。
ヘモグロビンの量が以下の数値に該当すると、貧血と診断されます。
成人男性 | 13~14g/dL未満 |
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成人女性 | 12g/dL未満 |
80歳以上 | 11g/dL未満 |
妊娠中 | 10.5~11g/dL未満 |
貧血による身体の酸素不足は、さまざまな症状として現れます。 立ちくらみ、めまい、顔面の蒼白、倦怠感・疲労、動悸・息切れ、耳鳴り、口内炎・口角炎、味覚異常などです。貧血の場合、まぶたの裏側が蒼白になっているため(通常は赤く充血している)、気になった時はご自身でチェックができます。
貧血症状の裏にはさまざまな疾患が隠れている可能性がありますので、気になる症状がある方はお気軽に当院へご相談ください。
貧血の原因
貧血には、以下のようにさまざまな原因が考えられます。
- 鉄分不足
- たんぱく質不足などにより赤血球やヘモグロビンを十分作れない
- 出血により赤血球が失われる
- 赤血球を作り出す幹細胞の異常
- 慢性的な炎症による赤血球が過剰に消費される
- 何らかの理由で赤血球やヘモグロビンが壊されている
- ビタミンB12や葉酸の不足(巨赤芽球性貧血・悪性貧血など)
- 骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、赤芽球癆、腎性貧血など、血液を作る臓器の異常
- 溶血性貧血や肝硬変など
- がんや関節リウマチなどで自己免疫を起こしている
- 感染症
これらの中には生命に関わるような疾患も含まれますので、貧血を軽視することなくお早めに当院へご相談ください。
貧血の種類
貧血は原因別にさまざまな種類に分類されます。主に以下のようなものがあります。
鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンの材料となる鉄が不足することから起こる貧血です。ヘモグロビンは肺から取り入れられた酸素を身体中に運ぶ役割を果たしていますので、鉄分不足によりヘモグロビンの量が減少すると十分な酸素が行き渡らなくなります。 鉄分の摂取不足や、出血などにより鉄分が失われることで生じます。
再生不良性貧血
血球は、骨髄の中で造血幹細胞が赤血球・白血球・血小板のいずれかに成長することで作り出されます。この造血幹細胞が減少すると、血球成分全てが減少してしまい、貧血状態になります。これが再生不良性貧血です。
二次性貧血(続発性貧血)
続発性貧血とは、何らかの疾患が原因となって起こる貧血です。長期間の炎症による赤血球の過剰消費、ウイルスや細菌などによる感染症、腎臓や肝臓の機能低下、慢性腎臓病(CKD)、糖尿病性腎症、膠原病、関節リウマチ、甲状腺などの機能障害、がん(胃がんや大腸がん)などが原因疾患として挙げられます。
悪性貧血
ビタミンB12や葉酸が不足することを原因とする貧血です。胃の手術の後などで胃酸が減少してビタミンB12を吸収できなくなったり、食事を摂らずにアルコールを摂取して葉酸不足になったりするケースが挙げられます。
腎性貧血:貧血と腎臓の関係
腎臓で分泌されるさまざまなホルモンの中の一つに、赤血球を作る働きを促進するエリスロポエチンというホルモンがあります。腎臓の機能が低下してエリスロポエチンの分泌量が減少すると、赤血球を産生する能力が低下します。このようにしておこる貧血を「腎性貧血」といいます。
腎性貧血の症状
腎機能低下による赤血球の減少は、身体の酸素不足を引き起こし、立ちくらみやめまい、動悸・息切れ、慢性的な疲労といった症状に繋がります。ところが、腎機能は徐々に低下していくことが多いため、これらの症状に次第に慣れてそれが当たり前のように感じてしまうこともあります。
慢性腎不全(CKD)の患者様には定期的な血液検査を行っていますが、その際に貧血の有無や程度をチェックすることができます。腎性貧血の適切な治療を行い最適な値に維持することは、患者様の生活の質(QOL)の改善に繋がるほか、腎臓病治療そのものへの効果も期待できます。
鉄不足は貧血の原因としてよく知られており、鉄分を摂る努力をされている方は多いですが、腎性貧血の場合は赤血球を作る能力そのものの低下を原因としているため、鉄を補充するだけでは貧血は改善しません。定期的に医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにすることが大切です。
腎性貧血の治療
人工のエリスロポエチンを配合したエリスロポエチン製剤や、赤血球の産生を促進する赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の注射、HIF-PH阻害薬の内服により、不足している造血ホルモンを補います。体内の鉄分が不足している場合には鉄剤を服用するケースもあります。
腎性貧血の治療目標
慢性腎臓病(CKD)による腎性貧血は、ガイドラインではヘモグロビン値を11g/dL~13g/dLの範囲内にすることが治療目標とされています。治療によってこの基準を超えた場合は、エリスロポエチン製剤やESAなどのお薬の量を減らしたり、一時的に休薬して経過をみることになります。
心臓や血管に重い障害がある場合は、ヘモグロビン値12g/dLを基準として減薬や休薬の判断をするケースもあります。