腎臓内科とは
腎臓内科の治療の中で最もポピュラーなものといえば透析治療かもしれません。腎臓の機能不全を起こし、身体の恒常性をコントロールできない状態に陥ると、透析治療や腎移植治療を通して腎臓機能をサポートする必要が出てきます。
このような治療も腎臓内科の大きな役割の一つではありますが、当院では透析や腎移植を実施することはできません。 当院では透析や腎移植が必要な状態に陥らないよう、腎臓に影響を及ぼす要因や疾患を明らかにし、腎機能のさらなる悪化を抑制することで腎臓ひいては身体全体を守るための診療を行っております。
腎機能が気になる方、下記の症状が続く方はお早めに当院にお越しください。
腎臓の役割
腎臓では以下のような役割を担っています。
- 血液をろ過し、尿とともに不要になった物質や毒素を排出する
- 血圧を調整する
- 水分・ミネラル分を調整する
- 4. 酸・アルカリのバランスを調整する
- 骨・ミネラルの代謝をコントロールする
- 造血ホルモンの分泌により血液量を調整する
腎臓疾患による症状
高血圧
腎臓は血圧をコントロールする機能を持っていますが、この機能が低下すると高血圧が引き起こされます。高血圧は腎臓に負担をかけるため、さらなる腎機能低下に繋がるという悪循環が起こります。
顔や手足のむくみ
腎臓機能が低下することで、身体から余分な水分や塩分が排出されなくなってしまい、むくみが生じます。また、尿中にたんぱく質が漏れ出し、血液中のたんぱく質が減少してしまうことからむくみに繋がるケースもあります。
主に手足やまぶたにむくみが現れることが多いですが、心臓の周囲や肺、肝臓、胃や腸にもむくみが発生することもあります。特に肺のむくみは呼吸困難に繋がる恐れがあるため、非常に危険な症状です。むくみの症状が続く場合は、お早めにお越しください。
尿量・色の変化
腎臓病を患うと、尿量に増減が生じます。健康な成人の尿量は1日に1000~1500mlである一方、腎臓病末期の場合、尿量が400ml以下になるケースもあります。 尿が泡立つ、尿が赤いなどといった、尿の状態や色の変化がみられる場合は、尿中にたんぱく質や赤血球が出ている可能性があり、腎炎などの腎臓疾患が疑われます。
また、膿尿という尿中に白血球が大量に含まれることで尿が濁る症状が現れることもあります。膿尿の主な原因としては、尿路感染などによる炎症が挙げられます。 尿に関する変化があった際はお早めにご相談ください。
蛋白(たんぱく)尿
本来、尿中にたんぱく質が出ることはほとんどありませんが、腎臓に炎症が起きている、大きな負担がかかっている場合に蛋白(たんぱく)尿が出る可能性があります。このような状態を放置すると、さらなる腎臓機能の悪化に繋がるため危険です。
蛋白(たんぱく)尿にはさまざまな原因が考えられ、原因によって治療法も異なるため、しっかりと診断を確定させる必要があります。蛋白(たんぱく)尿が判明したら速やかに受診しましょう。
尿潜血
尿に赤血球が混じっている状態のことを尿潜血といいます。多くの場合は顕微鏡的血尿といって、目には見えず検査紙や顕微鏡などでしか確認ができませんが、肉眼的血尿という目でも確認できる症状もあります。顕微鏡的血尿の場合、糸球体腎炎など腎臓の細かい組織内で発生する疾患が主な原因となります。
一方肉眼的血尿は、腎臓、膀胱、尿管、尿道に結石や感染症、悪性腫瘍などの異常が発生していることが原因となって生じます。疲労を原因として一時的に尿潜血を起こしている場合もありますが、上記のような疾患の可能性もありますので、症状が現れた際は当院までご相談ください。
腎不全(急性・慢性)について
腎不全は2種類の疾患に分けることができます。腎機能が急激に低下する急性腎不全と、長い期間をかけて徐々に進行する慢性腎不全です。急性腎不全については適切な治療を施せば腎機能が回復する可能性がある一方、慢性腎不全については低下した腎機能は回復できない場合が多いとされています。
急性腎不全では多くの場合、尿の出が悪くなる「乏尿」や全く尿が出なくなる「無尿」といった症状が主に現れます。慢性腎不全では、初期段階の自覚症状はないことが多く、病気が進行して初めて、夜間の尿量の増加、眼のまわりや足のむくみ、疲労感、食欲低下、息切れ、皮膚の痒みといった症状が生じます。
その他の主な腎臓疾患
糖尿病性腎症 (DKD)
糖尿病を発症すると、腎臓機能障害を合併する場合があります。糖尿病により、腎臓の尿を濾し出すフィルターや、腎臓の細い血管が障害を受けるため、腎臓機能の低下に繋がるのです。早期の治療ができれば血糖管理などにより腎臓機能の低下を防ぐことができますが、病状が進行すればするほど治療は困難になり、腎機能はどんどん悪化してしまいます。
慢性(糸球体)腎炎
幅広い年代の方に発症の可能性がある疾患です。慢性腎炎といわれるものの中にも多くの疾患がありますが、日本で多い疾患は「IgA腎症」です。無症状であることが多く、健診の尿検査でたんぱく尿や血尿が指摘され、発覚することがあります。確定診断のためには、腎臓の組織検査(腎生検)が必要になります。
疾患の種類や重症度によって治療方法は異なりますが、ステロイド剤や免疫抑制薬、一部の血圧の薬や抗血小板剤などを用います。無自覚のうちに腎機能障害が進行しているケースもあるため、早期発見と、継続的な経過観察が治療のポイントとなります。
腎硬化症
腎硬化症は動脈硬化を原因として生じる疾患です。腎臓に分布する中小の血管が細くなり、血流が悪くなることで、腎組織の機能が徐々に低下していきます。動脈硬化の原因は、主に加齢、高血圧、喫煙などですが、その他にも複数の要因が絡み合って生じます。健診や画像検査、過去の病歴などから早期に発見し、早期に治療を開始することが重要です。
多発性嚢胞腎
嚢胞(のうほう)と呼ばれる水風船のようなものが腎臓の両側や肝臓、その他の臓器に多発し、それらが大きくなることで腎臓の組織に悪影響を及ぼすといった疾患です。最終的に腎不全に繋がる可能性もあります。遺伝的な要因が大きい疾患ですが、孤発例(遺伝的背景が明確でない)もありますし、遺伝形態や発症形態もさまざま考えられます。
肉眼的血尿や発熱・腹痛といった自覚症状がきっかけで発覚することもありますが、健診などで初めて指摘される事例も多くあります。心臓弁膜症や脳動脈瘤などを合併するケースも多く、全身の状態を精密検査で確認する必要があります。現在はこの疾患に対する特効薬は存在しませんが、定期的な経過観察を実施することで、腎機能の低下や、脳出血などの合併症の進行を防ぎます。
自己免疫疾患(膠原病)
腎臓は、血管やその支持組織、尿を濾し出すフィルターとそれらをまとめ上げる結合組織、さらには尿の成分を調整する細胞など、さまざまな組織・細胞によって構成された臓器です。これらに対して過剰な免疫反応が生じると、腎臓に悪影響を及ぼすことがあり、この過剰な免疫反応を自己免疫疾患(膠原病)といいます。
腎臓に関わる自己免疫疾患の中では、全身性エリテマトーデス(SLE)やANCA関連血管炎などがよく知られています。いずれも早期発見・早期治療が重要です。ステロイド剤や免疫抑制剤、生物学的製剤などを使用し、寛解状態を保つことができれば、腎臓機能の低下を防ぐことができます。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、尿とともに大量のたんぱく質が排出され、血液中のたんぱく質が減少し、全身にむくみ(浮腫)が現れる病態を指します。「1日3.5g以上の尿たんぱくの排泄があり、血清アルブミン値 3.0 g/dl未満の低アルブミン血症がある」状態がネフローゼ症候群と定義されます。 ネフローゼ症候群は、原因が不明な場合(微小変化型ネフローゼ)もありますが、感染症、膠原病、血液疾患(多発性骨髄腫など)、悪性腫瘍といったさまざまな原因が考えられています。
ネフローゼ症候群の診断には、患者様の病歴、血液・画像検査、合併症、腎組織検査(腎生検)などを総合的に確認する必要があります。むくみなど軽い症状しか現れないケースもありますが、病態としては非常に深刻で、腎機能障害や易感染性(免疫低下状態)、血栓・塞栓症や出血性疾患(血液凝固機能異常)などに繋がる恐れがあります。早期発見・治療が重要です。 ネフローゼ症候群の治療は原因疾患によって異なるため、原因疾患の検索と治療が重要です。
病状によっては、原因の検索と並行してステロイド剤や降圧剤、利尿剤などによる治療を実施します。 ネフローゼ症候群の急性期(病状が落ち着いていない時)では、安静にして食事管理を行う必要があり、基本的には入院して治療と検査を行います。病状が安定していれば、定期的な通院による経過観察を行います。